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南米ペルー 遺跡巡りの旅:第21回

パチャカマ

 

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インカ以前から存在していた大規模宗教施設

  クスコからリマに戻って来ました。リマ周辺の大きな遺跡と言うと、街の南部に位置するパチャカマあるいはパチャカマック神殿があります。

 パチャカマックというのはケチュア語で「大地の創造者」という意味だそうで、この地を征服したインカがずっと昔からあった大規模宗教施設につけた名前です。この神殿の起源は、西暦200年ころまで遡り、この地に栄えたリマ文化、ワリ文化、イチマ文化などを通して伝統は継承されてきました。それを、インカも受け継いで存続させたのですが、次にやって来たスペイン人によって滅ばされたということです。

 私は25年前にこの遺跡に行ったことがあるのですが、その時は4人ほどでタクシーをチャーターして行きました。今回は一人なのでバスで行きたいと思い、詳しい人に行き方を聞きました。すると「宿の前の道をバスが通るからそれに乗ればいいよ」と言うのです。

 しかし、パチャカマック神殿はリマ市の南方30劼里箸海蹐砲△襪里任后H梢半疑で聞いてみると、リマのバスは市内をあちこち回りながら、かなりの遠距離を走るそうで、時間はかかるけど、とにかく我慢して乗っていればやがてはパチャカマックまで行くということでした。

 「それなら行ってみよう」ということで、宿の前の道に立って、パチャカマックまで行くというバスに乗り込みました。乗った時は結構空いていたのですが、10分もするとバスは満員になりました。そこからも人が乗る一方で、降りようとすると大変な状態です。

 40分もすると硬い椅子にお尻が痛くなりましたが、ぎゅう詰めの車内で座ることもできず、額に脂汗をにじませて我慢している人たちを見ると、座われていることだけでもラッキーと思うしかありません。

 そんな状態で約2時間。バスはやがて高速道路を走り、パンアメリカンハイウエイの旧道らしき道に入りました。そろそろだと思った私は、乗客をかき分けて運転席に行き、「パチャカマック遺跡はまだ?」と聞きました。すると、運転手が「ここだよ」と言います。ちょうどいい具合に遺跡の前に着いたのです。

 バスを降りると、目の前に遺跡の門と博物館に続く道がありました。中に入ると、まず博物館を見た後に遺跡に移動するようになっています。普通は自動車で遺跡内を巡るのですが、車など使えない私は、売店でミネラルウオーターを1本買って炎天下の遺跡に続く道を歩きだしました。


パチャカマック神殿の入り口。この先に博物館や売店がある。

遺跡に向かう道路。自家用車は時折走り抜けるが、歩いている人はほとんどいない。

 

神に仕える女性たちが住んでいた「聖なる乙女の館」

   まず、入り口から最も近い所に、Conjunto Adobitos(小さな日干しレンガの遺跡群)という遺構があります。これは、この神殿で最も古い時代であるリマ文化のものだということですが、アドベ作りの建物の跡しかありません。

 次にはAcllawasi(アクリャワシ)と呼ばれる「聖なる乙女の館」があります。ここは神に仕える女性たちが住んでいて、インカの神にささげる酒や食べ物を作ったり、織物を織ったりしていたということです。以前来た時も、この建物を見た記憶があります。

 ここから、遺跡を時計回りに巡る順路になっています。茶色い土の山の連なりの中に、アドベ(日干しレンガ)作りの建築物があちらこちらに顔を出しているのが見えますが、ほとんど崩れた状態にあるため、離れて見るとどうなっているのかよくわかりません。

 そこから10分弱歩いたところにあるのがPiramide con Rampa No1という構築物です。傾斜路のあるピラミッド1号と訳しますが、その名の通りピラミッド型の建物に上るための傾斜路が付けられています。これは、パチャカマックが最盛期を迎えたイチマ文化の時代に作られたということです。

 このピラミッドの横を神殿都市を南北に縦断する道路が通っています。長さ332m、幅4.2〜2mのこの道にはアドベ作りの高い壁が設けられているのですが、こうした道が都市を四つの地域に分割する形で作られていたそうです。この壁を修復している所を見ると、アドベを積み上げて作った壁の表面を平らな石で覆う構造になっています。


神に仕える女性たちが住んでいた聖なる乙女の館。

ピラミッドや住居跡などが固まっている遺跡の中央部。

傾斜路が付いたピラミッドNo1。

アドベ作りの壁を持つ道路。長さ332mあり、神殿都市を南北に貫いていた。
傾斜路が付いたピラミッドの前にある修復中の壁。

 

赤色に彩色されたパチャカマック神殿

 そこからさらに進んだところにPiramide con Rampa No2という構築物があり、私は遺跡に近づいて写真を撮ろうとしました。すると、ピラミッドの頂上に立っていた監視員が「ピーッ」と笛を吹いたのです。

 遺跡巡りは決められた順路の上だけを歩けということです。ほとんどは泥の山ですから、近付いたくらいで傷つくような場所があるわけはないし、そんなに神経質にならなくてもいいと思うんですが仕方ありません。

 そこからは砂漠に半分埋もれた様々な建築物の周りを歩くのですが、まだ修復されていませんから、アドベ作りの壁が泥の山から顔を出しているだけの景色が続きます。歩く距離も長く、太陽の日差しもきついのでかなり疲れます。

  最初は東に向いていた道路が、遺跡の東端を回り、南東向きに変わります。遠くの丘の上に大きなピラミッド状の遺構が見えます。これが、インカの太陽の神殿です。

 やがて、左側にかなり規模の大きな建築物が見えてきます。まず、大きな土の山が現れるのですが、よく見ると山腹にたくさんのアドベが積まれているのが見えます。これはTemplo Viejo(古い神殿)と呼ばれる建築物です。その横にあるのがTemplo Pintado(彩色された神殿)、これがパチャカマック神殿です。

 この神殿からは赤などで彩色されたり、魚、鳥などが描かれた壁が見つかっているそうです。この壁面を風雨から守るために、建物の一部には屋根や囲いが設けられています。しかし、道路を外れて遺跡に近づくことができないため、その壁を見ることはできません。いずれは公開されるのでしょうが、残念です。

 ちなみに、この神殿からは地震の神と考えられているパチャカマック神の木像が発見されているそうで、ここがパチャカマック信仰の中心地と考えられます。


Piramide con Rampa No2の上で手を挙げている監視員。

遺跡群の先の丘に太陽の神殿が見える。

Templo Pintadoと呼ばれるパチャカマック神殿は発掘調査中。

重要な部分には屋根が掛けられているが、階段の壁面にも赤色が残っている。

Templo Pintadoの全体図(上)と魚のデザインの壁面(下)。いずれも遺跡の看板の表示。

 

パチャカマック神殿を見下ろす太陽の神殿

 パチャカマック神殿の後ろの小高い丘の上にあるのがTemplo del Sol(太陽の神殿)です。

 1400年代の中ごろ、ペルーの海岸地方を支配下に置いたインカは、この地方の人々のパチャカマックへの信仰を禁止するのではなく、一定の条件下で認めるようにしました。そして、インカの太陽神の神殿をパチャカマック神殿を見下ろす場所に建設し、人々にパチャカマックだけでなく太陽神も崇めるようにさせたのです。

 パチャカマック神殿から道は太陽の神殿に向かって上り坂になります。それまでは車で回れたのが、ここから先は歩いていかなくてはなりません。そのため、この辺には大勢の観光客が歩いています。私は彼らの後をついて、ゆっくりと坂道を上りました。

 太陽の神殿も遠くから見るとかっこいいのですが、近づくと泥と石の壁ばかりで、特に印象的なものはありません。ただ、遺構に近付くこともままならないこの遺跡の中で、唯一、上まで登って見ることができる貴重な構築物といえます。

パチャカマック神殿側からみた太陽の神殿。

太陽の神殿の正面。要塞風の壁に狭い入り口が作られている

神殿の入り口。ここは通行止めで、右側を回って遺跡の上に登る。

太陽の神殿の北面。壁は赤色に塗られていたそうで、赤い塗料が残っている。

太陽の神殿の南面。高い石壁が作られている。

 

冷たい霧が発生する海と不気味な街がある砂漠

 太陽の神殿の上からは、北側に遺跡と砂漠、南側は太平洋が一望できます。驚いたことに、ここに立つと風が冷たいのです。これは南極から流れてくる冷たいフンボルト海流から発生する霧のためです。

 海を見ると先が白い霧で霞んでいて、その霧が風に乗って陸地に向けて押し寄せてきています。霧は陸地の景色も覆い隠すのですが、間もなく強烈な太陽の日差しによって消えていきます。

 一方、北側に広がる砂漠の光景も、日本では見ることができません。砂に埋もれた遺跡の先にまで広がる砂の海に飲み込まれそうな感じで、灰色の町が姿を見せているのです。砂漠にできたプエブロ・ホベンというスラムが発展して都市化したもので、遠くから見ると、SF映画にでも出てきそうな不思議な光景です。

 遺跡見学はこの太陽の神殿で終わりです。ほとんど修復されていない壮大な廃墟のような遺跡ですから、今のところ印象に残るものがあまりないのが残念です。ただ、首都リマの近くにこれだけ規模の大きい遺跡があるのですから、時間があれば行ってみて損はないと思います。

 その際、タクシーや路線バスだけでなく、リマ市内の観光地を巡る2階建て観光バス「Mirabus」を使うのもいいと思います。このバスツアーの一つに「パチャカマック神殿ツアー」があり、料金は3000円弱ぐらいです。


太平洋に沸く白い霧が陸地に押し寄せて来ている。

遺跡の先の広大な砂漠の中に灰色の町が姿を見せている。

 

線

 

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「第22回」に続く

 



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