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南米ペルー 遺跡巡りの旅:第17回

ピサック遺跡

 

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ピサック村の裏山には大きな遺跡がある

 クスコの北に「インカの聖なる谷」と呼ばれる地域があります。標高3400mのクスコから山を下った、インカ時代から続く多くの村が点在する標高2800m前後の谷間のことです。

 この谷でよく知られている遺跡には、オリャンタイタンボ、ピサック、チンチェロの3つがあります。最初に私が向かったのは、素晴らしい遺跡にもかかわらず、日本ではあまり知られていないピサックです。

 ピサックは遺跡よりも日曜市で有名な村です。このため、日曜日になると大勢の外国人観光客が村に押し寄せます。私は、そういうのが嫌いなので、平日に出かけました。

 クスコからの定期バスは1時間弱でピサック村に着きました。平日の朝のピサックは人も少なくのんびりしたいい村です。村の中を散策したくなりましたが、目的は遺跡なので、すぐタクシー乗り場に向かいました。

 体力に自信がある人は、村から登山道を上って遺跡に行くこともできます。しかし、大変な山道ですし、かなりの高所ですので無理は禁物です。タクシーを使うと、山の頂上近くにある遺跡の入り口まで10分ほどで行けるのです。


ピサック村の通り。後方の山に遺跡がある。

ピサック考古学公園と書かれた遺跡登り口の看板。

 

バラエティに富んだ遺構が残る最初の遺跡グループ

 タクシーで遺跡の入り口に着くと何台もの観光バスが駐車場に停まっており、様々な国の観光客が列をなして遺跡に入って行きます。いやな予感がしました。

 遺跡は観光客が多すぎると雰囲気がぶちこわしです。ここでも、いたるところ記念写真を撮る人ばかり。しかも、多くの人が一つの場所に長時間とどまって何枚もの記念写真を撮っているのです。それが、ひっきりなしにやってくるのですから、長い間他の人の撮影が終わるのを待っている私はイライラしてしまいました。

 後から聞いた話では、ピサック遺跡の観光客は午前中に集中するそうで、午後は静かになるそうです。

 ピサック遺跡は山の中に何カ所もの遺跡グループが点在しています。入り口近くに位置する最初の遺跡グループ(K’AN TUSRAKAI)は、見晴らしのいい展望台やカーブした城壁、神殿など、バラエティに富んだ遺構が存在し、周囲の絶景と相まってなかなか見応えがあるいいところです。


最上部にある K’AN TUSRAKAIの遺跡。最も観光客が多い場所。

石組みは全体的に荒い。入り口のようなくぼみにはミイラを安置していたそうだ。

バラエティに富んだ建築物があり、どことなくマチュピチュと似ている。

最初の遺跡から見た次の遺跡。斜面には広大な段々畑が作られている。

 

迷路のように入り組んだ山頂の遺跡

 最初の遺跡グループから谷沿いの道を10分ほど歩くと次の遺跡グループ(K’ALLAQSA)があります。この道の途中に、ピサック村方面につながる道が交差していて、ここには今も水が流れる沐浴場があります。

 二番目の遺跡は山の頂上に築かれており、神殿と住居群で構成されています。迷路のように入り組んだ構造になっているため歩き方に戸惑いますが、石壁に開けられた窓から見る周囲の光景は美しいです。

 ここの石組みも、一部にはインカの高度な加工跡が残っていますが、全体的には実用本位に荒く石を積み重ねただけの作りになっています。やはり、相当重要な施設でないと、規模の大きいインカの美しい石組みは見れないようです。

 ピサック遺跡を組み入れた聖なる谷の観光ツアーの場合はこの二つの遺跡グループを見学して終わり。これで所要時間は約2時間です。しかし、これだけでは大した遺跡とは思えません。実は、ピサック遺跡の良さはこの先にあるのです。


K’ALLAQSA遺跡。こちらは細かく仕切られた部屋が多い。

遺跡の上部から見た光景。下に見える小さな広場の横に沐浴場がある。

荒い石組みの中にも美しく仕上げた所がある。神殿など特別な場所だろう。

 

広大な聖なる谷を望む絶景が楽しめる道

  二番目の遺跡の下で交差するピサック村に向かう道を歩いていくと、インカの美しい石組みで作られた門があります。それをくぐって先に進むと岩山の絶壁の縁に付けられた道になります。

 途中には岩を削って作ったトンネルがあり、それを通り抜けると深い谷底を望む展望台に出ます。ここから見た周囲の景色の美しさと雄大さに心奪われます。狭い谷間を望むコンパクトな風景であるマチュピチュをはるかに凌ぐ絶景です。

 この展望台までくらいは来る人もいるのですが、その先になるともうほとんど人はいません。それ以上行くのは、ピサック村まで歩いて遺跡巡りをする人たちです。 


インティ・ワタナ(INTI WATANA)へ続く道に設けられた美しい門

深い谷を望む絶景の道が続く。

道筋の所どころに遺跡が残されている。これは監視塔のようだ。

 

マチュピチュより素晴らしい建造物群

 さらに、道は断崖伝いにどこまでも続きます。時に急な登りになりますが、たいていは下りですので、あまり疲れずに歩くことができます。少しずつ変化する周囲の景色を楽しみながら、ゆっくり1時間弱歩くと、眼下に新たな遺跡群が現れます。

 これまでの遺跡とはちょっと雰囲気が違います。遠目にも、前の遺跡のように荒い感じがなく、美しく整えられた特別な場所というのが分かるのです。

 近づいてみると、この遺跡は全体の構造物がインカ特有のピッタリ組み合わされた美しい石組みなのです。ここはインティ・ワタナ(INTI WATANA)と呼ばれる場所です。

同じ名前の場所がマチュピチュにもあります。これは日時計を意味するもので、自然石を加工して時間を計れるようにしている場所です。時間を司るのは農耕民族のインカにとっては非常に重要なことで、大切な神事を行う場所として整備したのでしょう。そのために、建築物はすべて神殿様式の美しい石組みになっているのです。

こうした美しい石組みはマチュピチュにもありますが遺跡のほんの一部でしかありません。こちらは、この遺跡グループ全体が美しい石組みでできており、神秘的な雰囲気が際だっています。

  向かい側に遺跡を望む小高い丘があり、そこに上って見ると、背後の山と神殿群が美しく調和して見えます。この光景からミニ・マチュピチュと呼ばれたりするようですが、遺跡をよく見れば、マチュピチュより素晴らしい建造物群であるのは明らかです 。これにはちょっと感動しました。


ようやくインティ・ワタナが見えてきた。遠目にも前の遺跡とは違うのが分かる。

インティ・ワタナの中心施設。その石組みの美しさはクスコのコリカンチャのようだ。

際立った美しさを感じるインティ・ワタナの全景。

 

ピサック村を眼下に眺めて歩くハイキング

 ここから、15分ほど山を下ったところに、また別の遺跡(PISAQA)があります。こちらは断崖を望む場所にあり、扇形に作られた住居群が残っています。ピサック村から登って来る人にとっては最初の遺跡群ですので、印象深いと思いますが、インティ・ワタナから来るとあまり興味が湧きません。疲れが出る頃でもあり、素通りしました。

 ここを過ぎると、まとまった遺跡はもうありませんが、長い石垣や深い谷を望む見張り所のような構築物が作られています。この辺まで来ると、広大な聖なる谷の川筋に広がる美しい田園風景とピサックの村が眼下に見えます。それは素晴らしい光景で、疲れも吹き飛ぶような感じで、歩くのが楽しくなります。

  一時、平坦でまっすぐな道が続きますが、やがて急な下り坂になります。ピサック村とは反対側の山に面してインカの段々畑の美しい光景が眼前に迫ります。急な岩だらけの道を降りていくと、反対側の山から流れ出た川にぶつかり、そこに掛けられた橋を渡ると轟々と音を立てて落ちる滝が現れます。この辺の景色も美しく、思わず足を止めて見とれてしまいました。

 やがて、ピサックの村が迫り、村人達が道筋に現れます。この日はお祭りで、午前中とは打って変わって村は賑わっています。ただし、観光客は少なく、周辺に住む地元の人たちが大勢、民族衣装を着て繰り出し、踊りを楽しんでいるのです。その単調だけど陽気な音楽に心が浮き立ちました。

 素晴らしい遺跡と自然を堪能した上に、こんなに楽しいおまけまで付いて、今日はほんとにラッキーだったと思いました。


断崖の淵に扇型に作られた住居群。

山道から望むピサック村。

この日はお祭りで、民族衣装を着た女性たちが大勢、村にやって来た。

 

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