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南米ペルー 遺跡巡りの旅:第10回

チクラヨ:シカン文化

 

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後期シカン文化の中心地トゥクメ

  チクラヨの二日目。前日参加したツアー会社はシカンツアーを行わないため、別の会社のシカンツアーに参加しました。

 「シカン」というのは発掘調査を行った南イリノイ大学の島田泉教授が名付けたもので「月の神殿」という意味だそうです。ペルーではこの地方の名を取った、ランバイエケ文化が知られていますが、シカンとランバイエケが同じで文化かどうかは不明です(Wikipediaのスペイン語版ではトゥクメはランバイエケ文化となっている)。

 シカン文化が栄えたのは、シパン王が君臨したモチェ文化が衰退した後で、750年〜1350年頃とされています。800年ころから1100年ころにかけてはバタン・グランデが中心地だったのですが、その後、中心はトゥクメに移りました。

 そして1350年ころ、勢力を拡大させたチムー王国によってシカンは滅亡させられました。しかし、チムーはトゥクメを地域統治に利用するため、さらに神殿の増改築を進めました。その後、やってきたインカも同様にトゥクメを利用しましたが、最後に来たスペイン人がすべてを破壊してしまったのです。

 後期シカンの中心地とされるトゥクメには26のピラミッドなどの建造物があるそうです。中でも最大のピラミッドであるワカ・ラルガ(huaca larga)は長さ700m、幅280m、高さ30mあり、ペルー海岸部では最大の古代建築物です。ただ、この地方の遺跡はほとんど同じで、アドベ(日干しレンガ)造りのため、風雨によって浸食され、泥の山にしか見えません。


乾燥した土漠を歩くとかつてのピラミッド神殿が姿を現す。

発掘調査の屋根が掛けられているHuaca

Huaca las Balsasから見つかったバルサ(葦船)のレリーフの復元模型

 

遺跡は大規模な工事現場みたい

 神殿群の横に小高い岩山(cerro purgatorio =煉獄の丘)が聳えており、そこへ登って見ると遺跡の全体が見渡せます。しかし、陽炎が立つ暑さの中で直射日光を遮るものが何もない、まさに煉獄のような岩山に上る元気はなかなか出てきません。

 元気な子供たちが先導し、大人たちもゆっくり丘に登って行きました。丘の中腹に2カ所の展望台(Mirador)が作られており、最初の展望台からでも遺跡全体を見渡すことができます。基本的に泥の山の連なりで、ところどころに発掘調査をしている場所を覆うトタン屋根が見えるだけです。

 遺跡はまさに大規模な工事現場という感じです。それでも、遺跡の先には見渡す限り緑の農地が広がっていて、景色がいいのが救いです。


丘に設けられた長い階段を登っていく。

最初の展望台からも遺跡全体が見渡せる。

展望台から見たワカ・ラルガ。写真右端から左上の緑の農地に突き出す長方形をしている。

 

日本でも展示されたシカンの財宝

  次に向かったのは国立シカン博物館です。ここには、1991年に前述の島田教授がポマックの森にあるワカから発掘した大量の副葬品が展示されています。

 こちらも、シパン王墓博物館ほどではないにしろ、かなり立派な博物館で展示物も優れています。この島田教授の調査は日本のTBSが支援し、出土品の展示やテレビ放映が日本で行われたため、日本ではかなり知られた存在だと思います。

 見どころは、まず、「東の墓」と「西の墓」の再現模型です。印象的なのは、「東の主」と呼ばれる男が天地逆さに埋葬されていたことです。こんな形の埋葬方法は他に例がないのではないでしょうか。墓の中には二人の女性も埋葬されていたのですが、その姿が出産をイメージさせることから、墓の主の再生を願ったものと推測されています。

 最大の見どころは、墓から見つかった金銀でできた副葬品です。中でも金銀銅の合金(トゥンバガ)で作られ、赤い染料が塗られた「黄金の大仮面」は見事な作りです。その他、様々な細工が施された金銀宝石の装飾品が展示されていますが、どれも素晴らしい出来栄えで、古代の人たちの情熱が伝わってきます。

 シパン王墓博物館と違って、写真撮影が可能なのもいいですね。いつまで可能かは分かりませんが。


国立シカン博物館の入り口

東の墓の再現模型。東の主が逆さになり、左側に二人の女性がいる。

西の墓の再現模型。西の主が座っているが、東の墓に比べて質素だ。

黄金の大仮面(左)は見事な細工が施されている。右の人物の頭飾りも手が込んでいる。

骸骨まで赤い染料で塗られている(左)。支配者階級の人物を復元した人形(右)。

 

シカンの大発見の舞台ポマックの森

 昼食後、シパン王墓博物館を再び訪ねました。別ツアーですからルートが重なるのは仕方ありません。皆が見学している間、私は治安が良くないというランバイエケのマーケットをぶらついて写真を撮っていました。

 最後の訪問地は、シカン発掘調査の中心地であるポマック森林歴史保護区です。ここはアルガロボという砂漠に強い植物の森で、シカン文化のワカがたくさんあります。島田教授は、この森の中にあるワカ・ロロを発掘して「東の墓」と「西の墓」を発見したのです。

 ただ、現在の発掘現場には何もなく、見てもただの泥の山です。このため、ツアーでは珍しく巨大化したアルガロボの木を見ただけで、ワカ・ロロは遠くからバスの窓越しに眺めておしまいという残念な結果でした。


ポマックの森のビジターセンター。

アルガロボの大木。こんなに大きくなるのは珍しいとか…。

シカン博物館にあったワカ・ロロの模型と写真。

 

ツアーは楽だが内容は

 チクラヨ周辺の遺跡などは、当然、ツアーを使わなくてもタクシーやバスでも行けます。ただ、ツアーはそれほど値段が高くないし、黙っていても遺跡や博物館に連れて行ってくれるから楽です。

 最近では観光客も増え、チクラヨ市内にある何社もの会社がほぼ毎日ツアーを出していますが、内容が少しずつ違いますから、コースなどをよく検討してから参加した方がいいでしょう。

 個人で行くと、街を散策するなどの楽しみもあります。近距離の移動には庶民の足であるモトタクシーが便利です。


ランバイエケでは写真のようなモトタクシーが庶民の足になっている。

 

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