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南米ペルー 遺跡巡りの旅:第1回

リマ: ワカ・プクヤーナ

 

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首都リマの高級住宅地ミラフローレス

 ペルーの首都リマは南米の太平洋岸を覆う砂漠の中の都市です。このため、砂漠性の気候で湿度が低いですから、真夏でも日陰は涼しく、朝夕は寒さを感じるほどです。1月の寒い日本から来ると、初夏の気候のように気持よく、過ごしやすく感じます。

 私にとって25年ぶりのリマですが、やはり大きく変わったと感じることが多いですね。何より、街が活気に満ち、経済が好調であることを感じます。以前は、多くの国民が貧困の中であえいでいるのが街の様子からよく分かりましたし、反政府ゲリラが国中で活動して社会を不安定化させている状況でした。

 もちろん、今でも多くの貧しい人達がいるのは間違いありません。しかし、ブランド店が並ぶ華やかなショッピングセンターに集まる若者たちはみんなおしゃれで、高級なレストランで食事を楽しむ家族連れも大勢います。それを見ていると、昔の暗いリマは別の国だったような気さえするのです。

 ところで、リマにはスペイン植民地時代の建物が残る歴史地区を中心に、高級住宅街や庶民的繁華街など、異なった特徴を持つ様々な地区が存在しています。その中で、旅行者にとって馴染み深いのは、高級住宅街であるミラフローレスでしょう。ここには多くのホテルがあるため、滞在する外国人旅行者も多いのです。

 昔は、小奇麗で落ち着いた街という感じでしたが、今はレストラン、ファッションブランド店、宝飾店、旅行社などの店舗が立ち並び、住民に加えて大勢の観光客で賑わう華やかな街になっていました。また、景色が美しい海岸沿いには、大きなショッピングセンターが作られ、多くの人たちがちょっと優雅な買い物や食事を楽しんでいます。


ミラフローレスの海岸沿いの丘の上にあるショッピングセンター。レストランのテラス席で食事を楽しむ人が多い。

 

住宅地の遺跡ワカ・プクヤーナ

  このミラフローレスにはプレ・インカ(インカ以前)の遺跡であるワカ・プクヤーナがあります。地区の中心地から少し離れた住宅街の中にあるというので、地図を見ながら歩いてみました。

 ワカ・プクヤーナは閑静な住宅街の中にひっそりと横たわるといった感じの遺跡です。都市化の波に周囲を侵食され、外から見ると、まるで何かの工場か建設現場のようにさえ見えます。入り口で入場券を買うと、係員が「ガイドが来るまで待て」と言います。ここはガイド付きで回らなくてはならないようです。

 私の他にも入場者がいたのですが、やってきた女性ガイドは「スペイン語はあなただけ」と言います。他の人達は英語のガイド希望だったのです。そのため、私はガイドと二人だけで遺跡を回ることになりました。

 ペルーの古代文明にはインカなど山岳部を中心に栄えたものと、ナスカなど海岸部を中心に栄えたものがあります。このワカ・プクヤーナは、紀元200年ころから700年ころにかけて現在のリマを中心とする海岸部で栄えたリマ文化の遺跡です。海岸部の文化の特徴は、建物をアドベと呼ばれる日干しレンガを積み重ねて作っていることです。アドベは、雨がほとんど降らない海岸部では最も簡単に作ることができる建築材料だったからでしょう。

 

ワカ・プクヤーナの建物は膨大な量の日干しレンガを積み重ねて作られている

 

膨大な日干しレンガを積み重ねた大ピラミッド

   ワカ・プクヤーナは古代の祭祀センターだったそうで、神事を行う祭祀センター部分と管理や政治などを行う統治センター部分に分かれています。神事が行われていたのは遺跡中央にある大ピラミッドを中心とした部分です。それほど高いピラミッドではないのですが、積み重ねられた日干しレンガの量に圧倒されます。この上に登ると、都市の遺跡らしく周りに住宅街が迫っているのが見えます。

 ガイドは、「以前はこの遺跡の価値があまり理解されておらず、周囲の宅地開発が進んでしまった」と言います。そのため、最盛期には18haあったという敷地面積の半分以上は住宅が建てられてしまったそうです。遺跡の発掘と修復はこれまで20年にわたって行われているのですが、予算が十分にないこともあり、「修復が終わるまでにはあと30年は必要だ」と言っていました。


日干しレンガを積み重ねて作られている大ピラミッド
遺跡の再現展示。リマ時代の後にここを祭祀に利用した人たちの儀式の様子。

 

耐震構造を持つ日干しレンガ

  この日干しレンガはただ積み重ねているだけではありません。ペルーの太平洋岸は地震が多いため、古代の人達は揺れに強い構造を考え、レンガとレンガの間に隙間を作ると同時に、少し斜めにしたジグザグ状に積んだのです。これによって揺れを吸収して崩れない建物になっているということです。きっと、何度も地震で建物が崩れた経験から、こういう建築方法を考え出したのでしょう。人間の知恵は凄いです。

 古代都市はそれを建設した人々の勢いが衰えると、放棄されてしまったり、他の人々から占領されてしまったりします。このワカ・プクヤーナはリマ文化が衰退した後、アンデスの山岳地帯から海岸地方にまで勢力を伸ばしたワリ文化(西暦500年〜900年ころ)によって支配されました。ピラミッドの上にはワリ時代の墓が作られており、発掘されたミイラを再現した展示が行われています。

日干しレンガは耐震性を持つように積まれている。
ピラミッド上のワリ時代の墓。布などで巻かれたミイラと供え物がある。
 

遺跡を楽しむレストランもある

 大ピラミッドがある祭祀センターに隣接して、統治センターがありますが、こちらはほぼ建物の壁の跡が残っているだけです。その一角に日干しレンガを作成する労働者を再現した展示がありますが、こういうものでも置かないと間が持たないといった感じです。

 ここの面白いところは、遺跡を見ながら食事が楽しめる高級レストランが併設されていることです。特に夜は、夜間照明に浮かび上がるピラミッドなどの幻想的な風景を眺めながら食事ができるということで、ミラフローレスの観光客などに人気があるようです。街の中にある遺跡ならではですが、そういう遺跡の楽しみ方もありですね。

 

祭祀センターに隣接した統治センターの跡。右端にあるのがレストラン
日干しレンガを作成する労働者たちの再現展示
併設の博物館に展示されている出土品の壺

 

 

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「第2回」に続く

 



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