パラチコの祭り

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メキシコ中部 遺跡巡りの旅:第6回

チアパ・デ・コルソの奇祭

 

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美しい川辺の町チアパ・デ・コルソ

1月下旬に、サンクリの近くの町で祭りがあると聞き、現地在住の日本の方に案内してもらい出かけてみました。町の名前はチアパ・デ・コルソと言い、1月15日から23日にかけて、パラチコと呼ばれる盛大なお祭りが町を上げて行われるのです。

  チアパ・デ・コルソはチアパス州の州都であるトゥクストゥラ・グティエレスに隣接しています。サンクリからはトゥクストゥラ行きのバスに乗り、途中下車すればいのです。所要時間は40分くらいです。私達が行った1月23日は祭りの最終日に当たり、儀式が最も盛り上がるということでした。昼過ぎに町に着いた私達は、まず、町の前を流れるグリハルバ川の川辺にあるレストランで昼食を摂ることにしました。

 

チアパ・デ・コルソの町。


川岸のレストランで川魚を食べる

グリハルバ川には、スミデロ渓谷という、900mもある切り立った断崖がある風光明媚な場所があり、チアパス州を代表する観光地となっています。チアパ・デ・コルソはここを訪れるボートツアーの出発地になっているのです。このため、川辺の船着場にはたくさんの観光用ボートが係留されており、岸辺にはメキシコ情緒たっぷりの観光用レストランが軒を連ねています。

  私達は、川を眺めることができるレストランのテラス席で、川魚(テラピア)の揚げ物を注文しました。テラピアは、こちらでよく養殖されている小ぶりな鯛に似た魚で、和名をイズミダイなどと言います。癖がなく淡白なので、揚げ物にすると美味しい魚です。マリンバの生演奏を聞きながら、明るい日差しの元、食事をつまみにビールを飲んでいると、本当にいい気分になってきます。これが、メキシコ旅行の大きな楽しみです。


グリハルバ川の観光用ボート

レストランで食べた川魚の揚げ物

世界無形文化遺産に登録された伝統の祭り

ミサが行われるサント・ドミンゴ教会は川の近くにあり、周囲では、次第に夕方からのミサに参加する着飾った人の姿が多くなります。女性はスペイン風の色鮮やかな花柄のドレスを着るのですが、男性は、頭に細い枝を束ねたタワシのような半球状の帽子(金髪を表すようだ)を被り、顔にはスペイン人を模した仮面、身体には鮮やかな横縞模様のマントを纏います。

 この祭りは「パラチコ」と呼ばれ、世界無形文化遺産にも登録されています。その由来となる物語は、17世紀にマリオ・アングロという女性が子供の病気を治すためにチアパ・デ・コルソにやってきたことから始まります。女性は懸命に看病したものの、子供の病気は一向に良くなりません。女性が毎日悲しんでいるのを見た周囲の人たちは、子供の病気がよくなるように仮装をして踊ったのです。すると、それを見た子供が微笑み、病気は快方に向かったということです。ちなみに、パラチコは「子供のために」という意味です。

 祭りは1週間以上続き、仮装した男性や女性、それに女装した男性も加わって、毎日、町中を練り歩くそうです。そのクライマックスとして行われるのがサント・ドミンゴ教会のミサです。ここには守護聖人のサン・セバスティアンが祀られており、最後に神輿に載った聖人の行列が行われるのです。というのは、1月20日はサン・セバスティアンの殉教日で、これは守護聖人の祭りでもあるのです。


ミサが行われるサント・ドミンゴ教会に人々が集まる

伝統的な祭りの衣装を着た男性と女の子

教会に集まる大勢の人々

ミサが始まる1時間ほど前になると、教会前の広場は着飾った男女で埋め尽くされ、教会内部にも人が集まり始めます。といっても、特段やることもないので、みんな記念写真を撮影したり、ぶらぶら歩いたりしているだけなのです。ミサが近づくと、神父が教会の入口に立って入ってくる人たちを迎えます。次第に、押し寄せる人波で教会内部は身動きがしにくい状態になって行きます。

 外が薄暗くなってくる頃、教会内部ではミサが始まります。ネギ坊主のようなヘルメット姿の男達で教会内の中心スペースは埋め尽くされ、女性たちは両脇に置かれた椅子に腰掛けて神父の話を聞きます。教会内は押し合いへし合いの満員電車状態ですから、人いきれが充満し、蒸し暑くてたまりません。教会の外に出て見ると、中に入れない(あるいは入りたくない)人たちが大勢いて、祭りの雰囲気を楽しんでいます。日本と同じで、食べ物や装飾品などを売る屋台がたくさん出ていて、ミサよりもそちらの方に興味がある人も多いようです。

 

ミサが近づくと教会前は大賑わいになる

入場者たちを神父が出迎える。祭りの衣装を着た人が多い。

教会の内部。広間が少しずつ埋まっていく。


最後に熱狂の渦になるミサ

ミサが終わりに近づくと、神父の言葉に合わせて教会の中の男たちが声を上げ、手にしたチンチンと呼ばれるマラカスのようなガラガラを激しく鳴らします。そして、男たちはみんなで飛んだり跳ねたり、奇声を上げたりの大騒ぎになるのです。葱坊主頭の大勢の男たちが狂ったように踊るのですから大変です。やがて、笛の音に合わせたダンスからガラガラの鳴らし合いになって行きます。

 この喧騒の中で、ご神体であるサン・セバスチャンの像が神輿に乗って引き出されます。この像は、普段は町の世話役の家に安置されているそうで、パラチコの祭りになるとこの像を引き出して街中を練り歩きます。そして、ミサの後で新しく世話役になった人の家に置かれるのだそうです。世話役はこの祭りのために大変な額の金を出費するそうですが、それが名誉と考えられているわけです。

ミサの最中は教会内は満員状態。入ったら出れなくなる。

参加者の熱狂の中サン・セバスティアンの像が引き出される。

ミサよりおしゃべりが楽しい女性たち。


この祭りはセマーナ・サンタ(聖週間)と似ていますが、参加者の格好が独特なのと、賑やかなミサの様子に特徴があると思います。このように小さな町が一体になって沸き返る伝統的な祭りは、今ではなかなか見れないだけに、貴重な体験ができたと思います。今回は時間がなく断念しましたが、次は、ボートツアーでスミデロ渓谷の雄大な景色を見たいと思いました。

 

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