チチカステナンゴ

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中央アメリカ 遺跡と自然巡りの旅:第16回

グアテマラ

神話の里チチカステナンゴ



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マヤの伝統文化が息づく神秘的な町

パナハッチェルからローカルバスを2回乗り継ぎ、チチカステナンゴにやって来ました。グアテマラ西部、標高2000m弱の山岳地帯に位置する小さな町ですが、スペイン風の古い街並みと古代から続くマヤの伝統文化が息づく神秘的な雰囲気が特徴となっています。

 着いた日は土曜日で、街の中心にあるサント・トマス教会の周辺に出ている店の多くは地元の人相手の日用品を売っていました。これが日曜日になると、観光客相手の土産物や手工芸品を売る店に代わるのです。観光客と共に周辺の村や町から大勢の人たちが押し寄せてきますから、町の中心部は大混雑のお祭り騒ぎになります。このような市は、グアテマラ高地にある多くの村や町で曜日を変えて行われているのですが、チチカステナンゴほど華やかで賑やかな市はありません。

チチカステナンゴの古びた感じの街路

市場はいつも大勢の買い物客でにぎわっている

マヤの神話「ポポル・ブフ」の発見!

もともとマヤのキチェ族が支配していたチチカステナンゴに、侵略者であるスペイン人はキリスト教布教の拠点としてサント・トマス教会を造りました。スペイン人はマヤが信仰していた神を否定し、マヤ文字で書かれた古文書を焼き捨ててしまいますが、そんな中で古代マヤの神話をスペイン語に移し替えて保存していた人がいたのです。

 1700年代の初め、サント・トマス教会の一人の修道士が、偶然、この書物を発見しました。これが、マヤの神話「ポポル・ブフ(Popol Vuh)」です。これにより、書物とともに発見場所であるサント・トマス教会も有名になったのです。また、グアテマラではキリスト教化の人手が不足したため、コフラディアという信徒組織を利用したのですが、これがキリスト教とマヤの神が混淆する土壌を生み出したようです。現在でも、コフラディアは伝統的な衣装でサント・トマス教会前に集まり、祈りをささげるなどの儀式を行っています。

 こうした経緯があるため、サント・トマス教会は、一般的なカトリック教会とはかなり変わった雰囲気の場所で、その内部はかなり異教的な空間になっています。ただ、教会内では写真撮影が禁止されているので残念ながら映像はありません。

サント・トマス教会と市前日の様子

土曜日の夜のサント・トマス教会前の様子

出店が並んで大混雑の市

日曜日の朝になると、街の中心部にあるサント・トマス教会の周辺の道路には隙間なく出店が並び、ホテルの部屋から出ただけで日曜市の熱気ある喧騒を感じます。特に昼近くになると人が増え始め、両側に出店が並ぶ狭い道路は行き交う人たちで大混雑になります。

 出店の多くは、マヤ伝統の織物や民芸品などを売っています。とにかく量が多いですから、店を何軒も見て行くと、バラエティに富んだ色やデザインの織物や帯などに魅了され、楽しいし、欲しくなります。ただ、質のいいものを探すのは難しく、いいものは価格も高いですから、見てすぐ買うのではなく、何件も比較してじっくり選んだほうがいいと思います。

サント・トマス教会前の道路は両側に出店が並ぶ

民族衣装のブラウスなどの織物を売る出店。

鮮やかな色で織られた布を使ったスカート

キリスト教とマヤの神が同居する場所

サント・トマス教会に着くと、玄関前の階段には花売りの女性たちが集まっています。教会の扉の前では、年配の女性が紐で吊るした缶に入れた香木を燃やして煙を振り撒いており、階段の下では、マヤの祈祷師らしき男性が火を焚いて何かぶつくさ言っています。一神教のキリスト教会の前で多神教のマヤの神に祈るというのは、不思議で面白いです。

 この教会は、元々マヤの神殿があった場所に作られ、現在ある階段は神殿の名残りだそうです。マヤの人々はキリスト教に改宗しながらも、ここを古代から続く聖地であり、マヤの神様もいると考えているのでしょう。たぶん、マヤの神が庶民にとって不可欠な存在になっているのは、直接的に願い事を聞いてくれるご利益があるからだと思います。

サント・トマス教会前の花売りたち

教会前で呪文を唱える祈祷師。GAPのパ−カーがミスマッチだ

観光化が進み賑やかさは増したが…

今回で三回目のチチカステナンゴでしたが、前回訪問の20年前と比べて、町の人々に経済的な余裕ができ、市の賑やかさも増しているように感じました。ただ、観光化が進んだ分だけ町や人々の素朴な感じが薄れ、泥棒などの危険も増しているようです。

  例えば、町外れの丘の上に行くと、パスク・アル・アバフという黒い石の神様が置いてあり、願いごとをする人たちが、供え物をしたり、ろうそくを燃やしたり、時には鶏や七面鳥を生贄に捧げる儀式などをしています。ところが、この丘に行く観光客を狙った強盗が時々出るらしいのです。私は一人で近くを散歩しましたが、汚い格好をした恐そうな男が私を見ていたので、早々に引き揚げました。以前はこんなことは無かっただけに、残念なことです。

 経済的に豊かになっているとはいえ、その恩恵を受けるのは一部で、大部分の人たちは貧しさの中で苦しんでるのが実態でしょう。そういうことも理解しながら、マヤの伝統や不思議な空間を楽しむことができれば、グアテマラの旅は思い出深いものになると思います。

パスク・アル・アバフに祈りを捧げる絵。後ろには軍事政権が行った弾圧も描かれている。

家計を助けるため子供たちも物売りに一生懸命だ。

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